2月の例会報告

平成25年2月17日 草津まちづくりセンター

午前9時40分~午後16時30分まで  

内容

午前「難経読み合わせ」  藤﨑慎司先生 

  「臨床報告」  桑原知子先生、二木清文先生

  「気功指導」  中尾俊哉先生

午後 取穴(実践的な取穴練習)、小里方式

 

午前は小林久志先生による会長挨拶から始まりました。

ここ2ヶ月の間で母親が急に歩けなくなってしまったというエピソードから始まりました。元々50代の頃に動けなくなり歩けなくなった経過があるようで、病院では大腿骨が変形しこのままでは歩けなくなると言われたそうです。当時は先生の鍼灸治療を施した結果そのようなことにはならずに済んでいたようですが、最近急に激しい股関節の痛みがおこったそうです。すぐに治療をされ、少し歩けるようになり、翌日より4回治療し大体よくなり、その後2回治療したところ落ち着いたということでした。そして次は父親がインフルエンザにかかり、インフルエンザワクチンは本当に効くのかという件についてのお話をされました。ワクチンは摂取してもかかるときはかかる、型が合わないと意味がない、感染した人から次の人へ移るときはインフルエンザウイルスの型が変化するため厳密にぴったり合うインフルエンザワクチンは作れないということで、副作用がある上にワクチンを打っても意味がないということでした。実際ワクチンを打っていても感染している人が多くいるということで、国の建前と製薬会社のためのワクチンという印象が拭いきれない気持ちで話を聞きました。

次に、日本のはりは感性のはり、中国のはりは理論のはり、そして伝統鍼灸学会では感性と理論のはざまにいるというお話から、漢方鍼医会では近年理論を先行するあまりに感性の部分をないがしろにしているという声があったことから手技についての話がありました。はりをする時、打つ前と打った後の変化をみることで差がわかってくるので、肌のつや、弾力、潤いなどそれらの変化をしっかり診れる人と診れない人とは技術の習得するスピードに大きな差が出てくるようです。昨年の夏期研の実技の時間では「そんなこと聞かんでも触ったらわかるやろ!」という声が聞こえたようで、過去に「理論じゃなくて手の感覚をもっとしっかり磨けよ」と聞いたのを思い出されたようです。鍼灸の魅力は触診力や薬を使わないで治すということにあるのですが、理論先行にするがあまりに素晴らしい技術の一つを見失わないようにと改めて気持ちを一つにしました。

午前最初の講義は、藤﨑慎司先生による「難経読み合わせ」でした。

今月は36,37難の読解進行をしていただきました。36難は腎の持つ二つの機能を陰陽に分けた機能の分化、37難は五臓六腑と脈気の関係から臓腑・経絡を解説したものになります。

次に桑原知子先生、二木清文先生による臨床報告がありました。

まずはじめに桑原先生のお話からはじまりました。昨年教員養成機関の学生時代に行った卒業研究についてのお話がありました。ていしんの効果を検証した試験をされたようです。はりの効果そのものを明らかにするためには病気が自然に治ったのではないということを科学的に証明する必要がある。心理的な効果で軽減することがわかっているためでもあるということから、はりを受けた、受けない、はりか偽はりを受けたグループをつくり実験をされたようです。定義をしっかりと立てることが大切だが、今後も研究の積み重ねにより証明をすることでていしんの効果、鍼灸の魅力が伝わればということでした。

次に二木先生のお話がありました。桑原先生の金属と木の偽はりの研究について、過去に家族の結婚式の場ではりの代わりにつまようじで治療をしたという話をしてくださいました。つづいて最近の臨床スタイルについての話がありました。病的な数脈については陽経から治療をする、その上でどの五臓の変動が大きいかというのを考える。そして邪正論についてですが邪が出たがっているということで脈がはねていると思ったら邪正論を頭に入れる、そして対応する五臓も考える。また穴が持つ浅さや深さも考えてみると衛気、営気の手技の判断がしやすいということ、気血津液論の割合、取穴に関して流中に乗る触れ方について詳しく聞くことができました。

 午前の最後の講義は、中尾先生の気功指導でした。
習得レベルに合わせたグループ分けをし、それぞれ新しい動きを学びました。

午後の実技は取穴からはじまりました。臨床で使う生きたツボを取る練習をしています。1ミリでもずれると効果も半減してしまうため、最も神経を集中させる時間でもあります。

目が見える先生はランドマークを無視して思い描いたツボの位置に手を持ってくるから経絡にも外れているし、触り方もぎこちなく気持ちよくないという指摘がありました。確かに「ここのあたり」と感覚で取穴してしまうのですが、「感覚では取れない、基本を積み重ねて取れるようになるものだから近道はない」という指導が入り、繰り返し頭に叩き込みました。

一人がツボを探し体表の経絡上を触れていくのですが、腕や足の丸みに沿って経絡も触れなければいい脈が出ません。同じ経絡を触れて同じツボを取っても結果が思わしくないのはこういう細かな違いによって生まれます。今回は心経をみたのですが、特に神門においては教科書では簡単に取穴できそうなものに対し、実際は多くの先生が豆状骨に突き当たるところでつまづき、何度も修正を重ねたのでありました。

つづいて次は基礎班と研修班と合同で基本刺鍼をしました。

滋賀漢方では、刺さないはりという「ていしん」を主に勉強しています。基本刺鍼は土台となる部分でこれを疎かにしては何も出来ません。お互いに受け、意見交換をするととても参考になり、もっとよくしたいという思いからつい時間オーバーしてしまいます。「ずっとこれをしていたい」という声が出て、周りの先生がうなずくというシーンがあるほど夢中になる時間です。

つづいて基礎班と研修班で3台のベッドに分かれて小里方式を前半・後半の2部に分けて行いました。

 

今回、はじめて新入会員の先生の普段の治療手技を拝見する機会となったのですが、今までしたこともない手段の連続の上、症状に対する効果もあり、その班に居た先生方からは驚きの声とともに質疑応答が絶えないものとなりました。色んなアプローチの仕方があり、視野が広がる瞬間というのは本当にわくわくしてしまいますし、適応しそうな患者さんの顔が浮かびます。

聴講班は二木先生が担当くださいました。今月は指導者の勉強として井上先生が入りました。

 

 例会後は指導者研修会が行われました。

興味を持たれた学生の皆さん、先生の皆さん、和やかで温かい滋賀漢方鍼医会に一度お越しください。また、わからないことがあれば何でも聞いてみてください。

一緒に笑って楽しく勉強出来れば嬉しいです。お待ちしております。

                 報告ページ担当 大野沙織