治験発表 骨盤矯正で劇的に回復した両足底の激烈な痛み
2026年2月15日
骨盤矯正で劇的に回復した両足底の激烈な痛み
発表:二木清文
1. タイトル
骨盤矯正で劇的に回復した両足底の激烈な痛み
2. 結果について
劇的な回復からスケートボードも再開できているものの、葬儀が入ったと予約取り消し後から治療は中断しています。
3. 診察について
3.1 初診時について
患者は50代後半の男性、以前から治療を勧められていたものの鍼灸という響きに腰が引けていましたが、痛みに耐えかねて来院。
3.2 主訴
両方の足底の激烈な痛みで、同時に腰痛もかなり辛い状態。子供がレッスンを受けているスケートボードで、送迎の余った時間に自分も滑り始めたなら夢中になってしまい、そのうちに痛みが発生してきたということです。
最初は左の足底のみ痛みを感じていましたが、庇っている間にふくらはぎから腰の痛みと連鎖反応してしまい、右の足底にも痛みを感じてきました。腰椎ヘルニアを診断された過去がありましたが、スケートボードを始めた頃は腰痛はありませんでした。
3.4 四診法
望診は中肉中背だが筋肉質でもなく、ストイックに練習して痛めたものではないことがわかります。聞診は特筆すべきことはなし。
問診では、スケートボードは練習場がすり鉢状になっていて勢いよく滑るのですが、バランスを崩してボードから飛び降りることは日常茶飯事とのこと。まだ初級レベルなので大技はないため、足底の痛みがスケートボードに原因があると考えていませんでした。インストラクターから痛みを抱えたままでの練習を禁止され、早く治療を受けるように言われていましたが歩行が困難なほどの痛みになってしまい、やっと来院です。足底に刺鍼されるものと思い込んでいたので、できる限り先延ばしにしていたらしい。
切診ではそこまで筋肉質ではなく、年齢相応のお腹が出ている状態。足底を触診すると長母指屈筋腱が強く緊張しています。かかとを揃えて足の長さを比べるとそれほど違っていませんが、アキレス腱の太さが左右で大きく違っています。この時点で過去の臨床から原因はほぼ特定できました。
腹診では肝で血滞が触れますが、熱も同時に触れるので津液不足による血熱のほうが問題に感じます。腎や脾でも少し津液不足を感じ、陰虚の状態と思われます。脈診では年齢や体格よりも胃の気がかなり不足した状態で、痛みをギリギリまで我慢していたことがすぐ読み取れます。肝の滞りが一番目立ち、菽法も六菽程度に浮いています。
4. 考察と診断
4.1 西洋医学や一般的医療からの情報
足底の痛みは「足底筋膜炎」と診断されるケースがおおく、筋膜炎でありながらウィルスとは無関係ということまではわかっていますが原因も不明です。治療は痛み止めの服薬や、インソールで痛む部位を押し付けないようにさせる対症療法が主流です。
4.2 漢方はり治療としての考察
痛みの強さから邪気論の選択肢も大いに考えられますが、切り分けツールで陰経から正気論となるので血滞による痛みであり、ギリギリまで我慢してきたので津液不足から虚熱が相当に上がってきているものと判断できます。
ただし、筋膜も相当に緊張していますしアキレス腱の太さが左右で大きく違っていることから、物理的な調整も加えたほうが治癒を早められることも最初から考慮します。
5. 治療経過
5.1 初診時の治療
筋膜炎であり血滞が認められ菽法から肝の高さが大きく外れていることから、選経としては肝虚陰虚証で間違いないだろうと男性なので左の太衝付近を軽擦し、脈診・腹診・肩上部の三点セットが整ってくることを確認。選穴は陰虚証であることから経金穴や合水穴の可能性が高いと予想しつつ五行穴すべてを探って、経金穴の中封の反応が完全一致であると確認。
本治法は左の中封へ衛気の補法を行い、脈診でそれぞれ菽法の高さへ概ね揃ってきていることを確認。続いて側頸部へ邪専用ていしんでナソ処置を行い、菽法の高さに完全一致で整えられました。ここから経絡に一周してもらうために約半時間ベッド上で休んでもらい、さらに脈状がきれいになったことを確認しています。
標治法は腰臀部に数本衛気の補法での散鍼の後、ゾーン処置を行うことで後頸部から背部・臀部まで効果的に緩んだことを確認してから、二木式奇経鍼で筋の深さを意識しながら臀部の硬結を揺らすようにして流しました。背部へローラー鍼と円鍼を行い、背部全体に艶が出たことも確認しました。
5.2 患者への説明
アキレス腱の太さが左右で大きく違うというのは骨盤がねじれている証拠であり、ここへ足底の痛みが発生しているのは仙腸関節の八リョウ穴でも中リョウの高さで大きく歪んでいることを臨床で繰り返し経験しています。そこで仰臥位で足底の痛みを片手で抑えて患者に確認してもらい、中リョウあたりの反応を押し上げるようにして圧迫して擬似的に骨盤の歪みを整復しながら足底の痛みをもう一度確認すると、一気に痛みが半減します。この患者へもこの方法で、原因が骨盤にあるのだと説明しました。狐につままれたような反応になることがほとんどで、今回も信じられないという反応でしたが腰を中心とする治療への同意は得られました。
骨盤矯正はねじれの場合は結構な痛みを伴いますがその時のみであることを了承してもらい、背部の治療の最後に行っています。治療回数は初診時では見当がつきにくいですが、必ず治癒できると断言しました。実際に最後にベッドから立ってもらうと、足底の激痛がほぼ感じられなくなっており、ますます狐につままれたような表情でしたが、感激の表情にもなりました。
5.3 継続治療の状況
二度目は一週間後、初心から七日目。足底の激痛が劇的に回復し、痛みは感じられるものの普通に歩けるようになったと大喜びで報告してくれました。自動車を降りて会社の自分のデスクへ歩いていくだけでも痛みがつらすぎて、その後トイレ以外は同じ場所から動かないようにしていたものがいきなり普通に歩いているので、会社で話題にもなったということでした。治療は初回と同様に行いました。
三度目は2週間後、初心からは21日目。風邪になってしまい治療が一週間飛んでしまいましたが、足底の痛みの改善はさらに加速して、踏ん張ることに恐怖感がなくなったといいます。スケートボードを早くやりたいということで、時間と回数は極少にするという約束で運動療法代わりに行ってもいいと許可しました。
4回目は一週間後、初心からは28日目。久しぶりのスケートボードはとても楽しく、滑っている間は全く痛みはなかった。練習後に少し痛みが感じられており、腰のだるさと重たさも感じていたので原因が骨盤でありスケートボードにあったことを実感したとのこと。
5回目は3週間後、初心からは50日目。年末で仕事が定時に終わらないことが多く予約変更を繰り返して、年内にはそれでももう一度と調整をして来院。治療は同様。仕事でもスケートボードでも疲労が蓄積すると痛みを少し感じるので、なるべく休憩を挟みながらと気は配っている。それでも痛みは数時間あれば回復するので、骨盤の歪みは自分ではどうにもならないもののメンテナンスが必要だと思っているとのこと。
6. 結語
6.1 結果
葬儀が入ったことで予約取り消し後、すでにスケートボードが再開できていることから来院されていません。治癒宣言をまだ出していないので中途半端になっているのは残念ですが、劇的変化から次に何かあれば鍼灸治療を必ず選んでくれるだろうという手応えはあります。
6.2感想
よく聞く経絡治療のを批判に、軽い治療だけでは物理的変化が認められるものへ対処できないだろうというものがあります。これは食わず嫌いの人たちからの一方的な攻撃であり、深い部位に対しては深いアプローチを当然行っています。そして滋賀漢方鍼医会公式テキストで打ち出しているように、皮毛・血脈・肌肉・筋・骨の深さへ用具を使い分けることで素早く対処できています。特に刺激治療が主なターゲットとしている筋の深さへ、二木式奇経鍼を用いることで刺鍼しないのですから痛みを完全に防ぎながら、より広範囲にスピーディーに施術できています。学生時代に苦労して練習していたものが何だったのだろうと言いたくなるくらいです。
また治癒を早めるために関節矯正も積極的に導入していますが、これらは経絡の疎通を改善する目的という位置づけです。実験をすればわかりますが、関節の矯正を行うと脈状は大きく変化します。逆に本治法を行うと解剖学的な変動を起こしてくることも日常茶飯事です。漢方はり治療では本治法を行うことで、すでに経絡の力で元通りへ復帰しようと動いているところへ関節の矯正を軽い力で行えています。安全面でも、鍼灸治療との併用は望ましいことだと言えます。
6.3 付記
足底筋膜炎の原因が骨盤の下方の歪みであると確定できたのは、視覚障害者の三療養成施設の職員があらゆる手を尽くしても改善できないので、治療してほしいと頼まれたことからでした。治療の開始時に困ったのが、当時は東洋はり医学会の相剋調整でしたが本治法を行うと足底が段々と自発痛になり、当日の夜は痛みが増悪したことです。これは本人が毫鍼で足底へ様々な刺鍼を繰り返していたために、本当に炎症が発生しており瞑眩反応のためでした。仕方がないので湧泉と然谷の間に一本置鍼を行いながら本治法を行うことで痛みを抑え込みましたが、置鍼をすると脈状が固くなるので脈診しにくかったことを覚えています。
数回の治療で足底の熱感が解消して刺鍼による炎症が収束しましたが、ピンポイントで強く緊張が残ります。一連の流れからピンポイントの緊張の原因は足底でないことがはっきりしたので、腹臥位で腰部から臀部まで押圧してピンポイントの緊張が緩む場所を特定していくと仙腸関節でも中リョウの内外でした。この頃には経験から仙腸関節へのアプローチが有効であることをすでに知っていましたが、完全に場所が特定できここから患者への確認方法が工夫できるようになりました。ちなみに第53回日本伝統鍼灸学会で医師が珍しく骨盤以上のことを公演されており、一言だけですが足底筋膜炎の原因にもなると発言されていました。
これは解剖学の正しい言葉ではなく二木清文個人で勝手に用いているものですが、臨床面で有効なので加筆します。仙腸関節の歪みは「ずれる」と「ねじれる」があります。仙腸関節は大きいので後上腸骨棘の高さの違いから左右どちらに歪んでいるかがたいていわかる「ずれる」状態となり、足の長さが違っていることから裏付けが取れます。5mmまでの違いは許容範囲で、半固定になっている仙腸関節の正常値であり自然回復しています。それ以上だと痛みにつながり、10mm以上になると強い痛みで自力では修復されないでしょう。ところが後上腸骨棘と中?の高さで左右が逆になってしまう「ねじれる」ことも発生します。アキレス腱の太さの違いで裏付けが取れます。この場合は徒手矯正で強めの痛みになるため、あらかじめ了解を得ておくべきでしょう。



