11月の例会報告

脉診流にき鍼灸院治療院外観
脉診流にき鍼灸院治療院外観

日時 11月16日(第3日曜日)
場所 脈診流にき鍼灸院
℡0749-26-4500

10時30分~17時00分

10時00分 治療室紹介(希望者のみ)

10時30分 会務報告
      実技公開 実技:大野先生、田口先生 司会:岸田先生
      心包経とダン中の治療 大野先生
      陶器灸         田口先生
       

12時00分 昼食

13時00分 臨床的自然体の実習

14時00分 臨床公開ディスカッション 実技:岸田先生 司会:大野先生

15時00分 休憩

15時30分 小里方式

17時00分 治療室例会終了

11月の例会は彦根の脉診流にき鍼灸院での治療室例会でした。参加者は会員21名、聴講2名合わせて23名で行いました。
開始時間がいつもより遅めの10時30分からでしたが、それまでに集まった先生方の中から希望者を募り、現役助手の原先生と中谷先生二人による鍼灸院見学ツアーが行われました。
お二人の先生の説明はとても詳しく鍼灸院の工夫を知ることができました。

会務報告の後、午前の実技が始まりました。

この時間は、それぞれの治療院でされている普段の例会ではみられない実技を披露していただきました。

はじめは大野先生でした。
大野先生は、6月の基礎講義で発表された心包経の反応とダン中穴の治療についての説明と実技を披露されました。
実技はダン中穴付近の圧痛反応を患者さんに尋ねながら探し、確認した後、患者さんに変化を理解してもらうために左心包経が緊張していることを確認します。治療はダン中穴の反応に灸点紙を敷いて半米粒大の透熱灸や瀉法鍼を施します。
施術後、ダン中穴と左心包経の反応を確認すると、ダン中穴の反応(粘りがあるような感触)がとれ滑らかになり、左心包経の緊張も見事に柔らかくなっていました。
心包経の緊張を確認してもらうのは患者さんに効果があることを納得してもらうのに有効で、患者さんとの信頼関係を築くことができると話されていました。

次の田口先生は陶器でできた器と専用の炭を使った陶器灸の説明と実技を披露されました。
陶器の器は10センチほどの筒型で底は閉じられています。1センチ角ほどの大きさの炭を中に入れ、腹部や腰臀部など必要なところに当て施術します。
参加者の多くがお灸の気持ちよさを体験しました。

午後はじめの時間は、第20回漢方鍼医会夏期学術研修会滋賀大会で行われた臨床的自然体の復習でした。
6つの班に分かれ、それぞれ電動ベッド1台ずつ使い、復溜と太淵の取穴を通して実際の臨床に近い形で実技をすることができました。

次の臨床公開ディスカッションは今日初めて参加された聴講生の方をモデルにし、私、岸田が実技を披露しました。心の中で患者さんの身体に問いかけるや持った鍼に対して患者さんの身体が反応するなど普段例会では話さないことも含めて説明をしながら実技をしました。
様々な鍼に対しての患者さんの身体の反応は興味深く感じてもらえたようです。

休憩を挟み終了まで、はじめに分けた6班で小里方式をしました。
各班、電動ベッドを使い、お灸を使用したり普段の例会ではできない貴重な体験ができました。

例会終了後は、近くのビバシティ内にある秀月で懇親会を行い、親睦を深めました。

報告者:岸田美由紀

10月の例会報告

二木先生が朝の挨拶を担当されるときには最近の治験例を話すことになっています。
今回は腰椎圧迫骨折の婦人。初診時は殆ど自力で動くことができませんでしたが、肺虚肝実の本治法と瀉法鍼で数回治療し、歩いてこられるまでに回復したものの、肺梗塞によって急逝したというショッキングな治験でした。数日後、件の患者さんの遺族が挨拶に見え、「元気な状態で最後を迎えられたのはよかったと思います」との言葉に恐縮し感謝したとの話でした。

難経読み合わせ
今月は中川先生が五十九難と六十難を担当されました。読みづらい字句を解説しながらのわかりやすい読解進行でした。
特に五十九難では、狂病や癲病などの精神に変調を来す疾患を陽明経の熱の消長として診察・治療するという考え方には、久しく忘れていた視点を思い出させてもらいました。

基礎講義
今月は鶴留先生が「肝の病症と治療」について講義されました。肝の働きと病症をざっと復習し、肝に関する証について一つ一つ講義されました。各証と病症との関係がよくわかりました。

脈診修練
滋賀漢方では、六部定位脈診に難経五難の菽法脈診と、浮沈・遅数・虚実の八祖脈などを併せた脈診を修練しています。

取穴
滋賀漢方の取穴実技は、正しい穴所に指を持って行くだけでなく、刺鍼に最適な姿勢をも身につけられるように工夫されています。正しい取穴と最適な姿勢によって身体全体が驚くほど変化します。
今月は小腸経から後谿と支正を取穴しました。ランドマークがしっかりしている後谿の取穴はあまり問題はなかったのですが、支正の取穴になると殆どの人が苦戦しています。おかしいな。あらら、これは前腕部の流注を勘違いしています。前腕部の流注は尺骨縁でもほんの少し心経寄を通っているのに、皆三焦経寄に取っています。流注を心経寄に取り直してもらうと、流注に乗った瞬間に脈が充実し、頸や肩上部がふわっと弛みます。取穴のおもしろさと難しさを再確認した時間でした。

基本刺鍼
刺さない鍼であるてい鍼の刺鍼技術を習練します。てい鍼の技術に熟達すると毫鍼以上の効果を出すことができます。

小里方式
何か症状のある人をモデル患者にして診察・証決定・治療にいたるまでを実地臨床に近い形で研修します。今月は聴講班を岸田・安江の両先生が、基礎班を二木先生が、研修班を小林先生と山森がそれぞれ担当しました。
正しく証を立てることで、たった1穴への刺鍼でも身体の状態をガラリと変化させられるのを目の当たりにすると、「ああ、やっぱり鍼はおもしろいな」と改めて思いました。 

例会終了後は有志で指導者研修会を行いました。

報告者 山森伸樹